[QIC009:量子エラー訂正コード] (2003/09/23:渚 博)
量子通信や量子コンピュータ等の量子システムにおいて、外部環境からの擾乱による量子状態の緩和(デコヒーレンス)は通信エラーや計算エラーの原因となります。そこで、デコヒーレンスによる量子エラーを訂正する方法についてまとめました。
デコヒーレンスは量子から古典への遷移において決定的な役割を有する過程であることは明らかです。しかし多くの場合、物理学者は我々がそれを取り除くことを欲するため、デコヒーレンスの明確な原因を理解することに興味を持っています。
かくして、デコヒーレンスは我々がいくつかの実験で信号として観察したい量子干渉効果を破壊する原因となります。これは量子計算(および一般に量子情報物理学)において、疑いもなく直面しているタイプの状況です。
量子コンピュータは、波動関数が指数関数的な数の古典計算を同時に探索する巨大な干渉計です。コンピュータ波動関数の枝間のコヒーレンスは維持されなければなりません。なぜなら、これら枝間の量子干渉の存在が、これらコンピュータが古典的対応物より効率がよい基本的理由だからです。かくして、この文脈でのデコヒーレンスは主要な問題です。
ダメージを受ける量子状態からデコヒーレンスを防止する明確な方法は、システムと環境の結合度を低減することです。しかしながら、この結合をゼロにしてこの方法でデコヒーレンスを除去することは決して可能ではありません。注目すべきことに、最近数年間に環境との相互作用の低減効果によって、量子状態に貯蔵された情報の積極的保護を可能にする新技術が現れました。
それらは「量子エラー訂正コード(QECC)」の名称で出現し、量子コンピューティングに従事する人々によって考案されました。それらは極めてシンプルで美しいアイデアに基づいており、物理学の他の領域でも有用であると分かるでしょう。このため、量子状態を維持して「デコヒーレンスと対抗する」ことを原理的に可能にする方法の素朴な提示を行うために、本節を含めることは興味深いことであると信じます。
量子エラー訂正コードの基本的アイデアを導入するために、古典情報を保護できる最も簡単な方法についての短い議論から始めるのがベターです。ノイズの多い環境下の単一キュービットbがあると仮定しましょう。ノイズ効果のため当該ビットはある時間の後反転する確率pを持つと仮定します。
それ故に、その時間後にビットを見れば、ノイズによって不変のビットの確率は1-pであり、それ故に情報は劣化しています。この古典的ビットを保護できるでしょうか?答えは「はい」であり、その方法はエラー訂正コードを用いることです。
最も単純な手段は、次のような冗長性の強引な使用に基づいています。この1ビット情報を、もっと多くのキャリアを用い、当該ビットの情報を多くの同一コピー(すなわち、b→(b,b,…,b))にマッピングして「符号化」できます。
これを行えば、投票に付して大多数の投票を獲得した一つを結果として選定することで、ノイズ発生後、初期情報を回復できます。この方法ではどのキャリアがノイズによって変わり(すなわち少数派)、情報を回復しているかを見いだすこともできます。
もちろんこれはエラー確率が十分小さいときに機能します。明確にするために、情報を3キャリアビット(これは最もシンプルな反復コードです)で符号化すると仮定しましょう。反転なしの確率はP(反転なし)=(1-p)3、他は単純にP(反転1)=3p(1-p)2、P(反転2)=3p2(1-p)、およびP(反転3)=p3。
かくして、上記エラー訂正戦略(一つを三つのビットに符号化し、最後に投票に付す)は、源情報を保持する確率を1-pから1-3p2+2p3=1−0(p2)に増大します。これは与えられたpが十分に小さければ、1に近づきます。この例は最も単純な古典的エラー訂正コードを表します。
もちろんもっと洗練されたコードは存在し、我々はおそらく上記例のような自然なコードを用いることによって、古典的エラー訂正コードの美しい理論に対して正当な取り扱いをしないでしょう。しかしながら、それは我々の議論の目的にたいして十分であると考えます。
基本的な論点はこのシンプルな手法が量子力学に一般化できるかどうかになります。上述の自然反復コードの量子版は、量子状態の非クローニング性の帰結として決して機能しないので、この仕事は不可能であるとの推測におそらく導かれるでしょう。
また、測定が量子システムの状態に劇的に影響を及ぼすという事実は、単純に古典的エラー訂正のアイデアを移し替える量子エラー訂正戦略を導入することの困難さをどことなく暗示しています。しかしながら、1995年ピーター・ショアが最初の量子エラー訂正コードを作り出したとき、この予想は正しくないと分かりました。
彼の仕事は再度多くの活動のきっかけとなり、ここ4年間で量子エラー訂正コード(QECC)理論は完全に発展しました。これまでのところ、これらのコードの作動を示すいくつかの実験デモ(NMR実験においてのみ)がありましたが、われわれの観点ではQECCの興味深いアイデアはまだ、それらが最初に動機を与えたこと以上の他の目的に有用であるか否かに明確な答えを与える物理学者待ちです。このためこれらの論点を本報で扱うことは興味深いと考えます。
それではいかにしてQECCを作り出すことが可能であるか述べましょう。このため、任意の量子状態
で用意された量子ビットを考えます。正確に言うと、最初にいかにノイズが状態を保護したいキュービットの状態に影響を及ぼすかを述べます。最初に、「位相の散逸」だけを生じる最も単純なノイズの場合を考えます。
ノイズは確率pでランダム位相を導入、あるいは確率1-pで状態をそのまま残すと仮定します。これはノイズに満ちた環境が量子システム上に生成できる最も一般的な種類の操作ではありませんが、後でこれは限定的な仮定ではなく、ここで提示する取り扱いはノイズが生成できるすべての効果を含むように一般化できることを示します。
それでしばらくの間この「位相の散逸」ノイズだけを考えます。位相の散逸はシステムの状態におけるσz作用素の作用によって簡単に記述できます。本節では次のような表記を採用します。パウリ行列σx,y,z は簡単にX,Y,Zと表示します。かくして、システムの初期状態を
とすると、最終
状態(ノイズ発生後)は次のような密度行列によって記述されます。
(1)
ここで、![]()
ノイズとの相互作用は量子コヒーレンスの損失を引き起こして、量子状態を劣化させることは容易に分かります。この劣化の尺度として、理想状態と実際の状態の重複によって簡単に与えられるプロセスの「忠実度」を計算できます。密度行列に対する上記形式を用いて、忠実度は
に低減することが分かります。かくして、忠実度はエラー確率pに比例する分だけ低減します。
劣化の他の尺度は、例えば
によって評価できる最終状態の純粋性の損失によって与えられます。後で、忠実度(あるいは純粋性の損失)がエラー確率とともに直線的に劣化するのでなく、二次曲線的に劣化する状態で量子状態を保護できる方法を提示します。
それで、位相散逸環境の影響からキュービットの状態を保護する方法を提示しましょう。古典的な場合として、情報の1キュービットを保護するために多くのキャリアを用います(本事例では1キュービットを保護するために3キュービットを使用します)。しかし、冗長性の使用は量子の場合もっと巧妙でなければなりません。
鍵となるアイデアは、エラー発生時論理状態が他の直交部分空間(訂正したい各エラーにたいして1部分空間)にマッピングされるような方法で、論理状態を3キュービットのエンタングル状態に符号化することです。
これが真実であれば、どのような二次元部分空間に状態が置かれているかを知らせるオブザーバブルを測定することによって、エラーについて学ぶことができます。この方法で、エラーは状態自体についてのいかなる情報も得ていないことを学びます。
一度エラーを知ればそれを訂正し、もう一度プロセスを開始することができます。このアイデアは3キュービット事例によって明確に(そうであれと望む!)描かれます。この場合、論理状態に対して次のような符号化を用いることができます(添字Lは論理状態を表すのに用いられます)。
(2)
「符号化」過程は、単純に上記のエンタングルした論理状態への3つの独立キャリアの物理状態のマッピングです。このタスクは情報を保護するために行うべき最初の一つで、ユニタリー作用素(符号化作用素 E )によって表されます。
量子状態が保護されるべきキュービットを選び、使用する他の二つのキャリアと一緒に操作を適用します。この操作は初期状態を符号化状態にマッピングします。すなわち、
。本節の後の方で符号化操作を実行できる方法を述べます。
式(2)が有効な符号化である理由は次のように理解できます。二つの論理状態のどれかにエラー作用素を適用するとき(すなわち、キュービットのどれか一つにZ作用素を作用させるとき)相互直交状態を得ることを示すことは簡単な課題です。
かくして、
に対して
、すなわち二つの論理状態およびそれらの「エラーを含む派生物」は3キュービットの完全ヒルベルト空間の基底を構成する8つの相互直交状態の集合です。それ故に全ヒルベルト空間は4つの二次元部分空間の直和に分解できます。
二つのベクトル
で一般化される「論理部分空間」
は、単純に
である3つの「エラーを含む派生物」を持ち、全ヒルベルト空間は
および
の直和です。結論として、4つの部分空間のどの一つに状態があるかを決定するために測定することができるオブザーバブルがあります。そうすることでエラーを発見し、それを簡単に訂正できます。
記述を完結するために、まさにその測定がエラーを明かすオブザーバブルは何かを示さなければなりません。このために論理状態の対称性(式(2))に注目することは興味深いことです。これらの状態は固有値 +1を持つ作用素
および
の固有状態であることは明らかです。(かくして、
は偶数番のすべての状態の均一重ね合わせであり、
は奇数番のすべての状態を含みます。それ故にこれらの状態は、
作用素が何をするかがはっきりしているどれか二つの状態を反転するとき不変です。
さらに、
は固有値が
の二つの可換エルミート作用素であることを示すのは容易です(これはこれらの作用素の二乗が恒等式、すなわち
という事実によります)。さらに、論理部分空間のすべての「エラーを含む派生物」は、
の固有空間でもあることを示すのは簡単です。
例えば、部分空間
は、固有値 -1を持つ
の固有状態であるベクトル
の線形重ね合わせによって構成されます。これは、エラー作用素
は
と非可換なので、これらの作用素の固有状態を異なる固有値を持つ固有状態に変換するという事実から得られます(すなわち、
であれば
)。
それ故に、目的が4つの二次元部分空間のどれに状態が存在するかを見つけ出すことであれば、まさに二つの作用素
を測定しなければなりません。測定結果は常に二つの数
および4つの部分空間(シンドローム
に対する
、
に対する
、
に対する
、および
に対する
)の一つを一意的に同定する4つの可能な選択肢のそれぞれ(それらはエラーシンドロームとして知られる)の集合によって表されます。
この種の測定を成し遂げるために、いかなる種類の物理的手段に従うかについて考えることはまた興味深いことです。議論したように、パウリ行列のテンソル積として構築される作用素
を測定する必要があります。しかしながら、これらの積で現れる係数を個別に測定することなく、これを行わなければならないことを理解することは極めて重要です。
かくして、この場合、
および
だけを測定する必要があり、しかし3つの作用素
を個別に測定することによってこれを行うことはできません。もしこれを行えば、可換オブザーバルの完全な集合を測定しているでしょうし、システムを特定の状態へ崩壊させているでしょう。
その代わりに、量子エラー訂正はオブザーバブルの完全な集合ではなく、システムの状態におけるコヒーレンスを破壊することなく、エラーについての情報を得るのに十分なだけのオブザーバブルの測定を必要とします(かくして、状態を二次元部分空間に射影しそれを一つの線に崩壊させない測定を望むことになります)。
個々の係数を測定することなく、パウリ行列のテンソル積であるいかなる作用素も測定できる戦略を考案する系統的な方法を見つけることは、困難ではありません。これを行うために、測定するオブザーバブルは集合的であるので、相互作用の後測定結果が一つだけの粒子に「書かれている」ような方法で、キュービット間の相互作用を導入すべきであることは明らかです。
例えば、二つの粒子を持っており作用素
を測定したいと仮定しましょう。また、条件
を満足するユニタリー作用素
を見つけると仮定しましょう。この条件は、作用素
が固有値
(それは
だけであり得る)を持つ固有状態
を、固有値
を持つ固有状態
に変換ことを意味します。
それ故に、
を測定したければ最初にユニタリー作用素
を適用し、それから
を測定します(換言すれば、
は基底を
から
固有状態に変える作用素です)。かくして今や、まさにこの作用素を構築する必要があります。これは簡単な量子回路を用いることで行うことができます。
実際、作用素
のための量子回路は図1に示されています。各キュービットにアダマール変換を適用し、それからコントロールとして第1のキュービットをそしてターゲットとして第2のキュービットを用いて、c-notを実行しなければなりません。これは
に対する正しい回路であることを示すために、まさに
の関係が満足されることを示さなければなりません。
図1 3キュービット量子エラー訂正コード用復号化回路
このために、
を回路の左に適用し、
作用素の右への移動を開始します。これらの作用素は
を満足するので、それらはアダマール変換を通過するとき
作用素に変換します。それで、コントロールにおける
作用素は回路の終端を通り抜けますが、ターゲットにおいて動作する
作用素は最初のものを取り消す制御キュービットにおいて特別な
を生成します。
それ故に、これは回路が要求された恒等式を満足することを意味します。このシンプルなアイデアを用いて、簡単な量子回路を設計することができれば、それはパウリ行列のテンソル積として形成されたいかなる集合的オブザーバブルも測定するのに使用できます。
さらに、これはいかなるキュービット数にも一般化できます。例えば、
および
を測定する回路は図1に与えられており、後にコントロールとして動作する第1キュービットを持つ二つのc-notゲートが続く三つのアマダール変換(各キュービットに一つ)からなります。
回路の後で第2および第3のキュービットを測定すれば、シンドロームについて学び、そしてそれ故にどのようなエラーがあったかを見つけることは容易です。エラーから回復するために、測定しなかった(本例では第1キュービット)残りのキュービットに、簡単な操作を施さなければなりません。
このキュービットは、元に戻すことができるあるユニタリー変換に合致した量子状態を含みます。エラーから回復する方法を見つけ出すのに、アイデアは単純に、回路がエラー自身に何をするかを見ることです。実際、図1に示す復号化回路と関連した作用素
は
および
を満足することを示すことは容易です。
それ故に、これは符号化状態が
型エラーによって影響されれば、復号化後の結果として生じる状態は(すでにこのエラーに相当するシンドロームであると知った)ものに対して最後の2キュービット集合を持ち、第1キュービットは元に戻すべき
変換によって影響されることを意味します。これに反して、他の二つのエラー(
および
)はいかなる訂正動作も要求しません。
それでまとめると、エラー訂正手順は次のようになります。(1)図1に示す符号化回路を適用して3つのキャリアでキュービットを符号化します。(2)エラーがシステムに作用した後、状態を復号化、シンドロームを検出し、訂正操作を適用します。(3)シンドロームキュービットをリフレッシュし(それらをゼロ状態にリセットして)、再度符号化します。
シンドロームの測定は実際には必要ではありません。なぜなら、それは量子回路(本事例では第2および第3キュービットによって制御されるc-c-not)によって遂行される訂正操作により常に置換することができるからです。この方法の必須の部分は、エラーによって生じた「エントロピー」の除去を担う部分であるシンドロームキュービットのリフレッシュです。
二つの最後のコメントは、より正式に説明する前にしておく価値があります。第一に、我々の議論はこれまでエラーが単一(未知の)キュービットに作用したある因子によって加えられると仮定したことに注目すべきです。しかしながら、
型エラーによって影響されたいかなる1キュービットに対しても確率
である状況を考慮するために、この方法を拡張することができます。
この場合、復号化および訂正回路が適用される前の3キュービットの状態は、次の密度行列によって与えられます。
![]()
(3)
この密度行列に復号化および訂正手順を適用後、最初の二つの項は単純に
に比例することは明らかです。かくして、この方法でエラー確率
において線形である項を完全に除去しました。最終状態は、エラー確率における二次の項だけ理想状態と異なります。それ故に、全プロセスの忠実度は、
によって与えられます。
これで
の
依存性における線形から二次への変化は、量子エラー訂正の全体的な能力に頼っています(それは明らかに、
が十分に小さければ連鎖なしにこのレベルで機能する十分な可能性を持つだけです)。
最後に、より一般的な種類のエラーを考慮していないことについて気がかりでしょう。しかしながら、今となってはこれまでに述べた一般的アイデアはより一般的な操作を含むように一般化できることは明らかに違いありません。
環境がキュービットに引き起こすあらゆる可能な影響に気を配ることは重要であり、位相エラー(
操作と関連)だけではなくビット反転(
操作と関連)および両方の組み合わせ(
操作に関連)に対しても防御しなければなりません。三つのタイプの独立のエラーに対して防御できれば、常にこれら3要素および恒等式の一次結合である作用素の項で記述できる任意のユニタリー(または非ユニタリー)エラーに対して効果的に対抗できることは明らかです。
それで、問題はキャリアキュービトのどれか一つに影響する任意のエラーに対して防御するコードを考案する方法です。このようなコードは最初ピーター・ショアによって提示され、前述の基礎としての3キュービットQECCを用いて構築できます。事実ショアは各3キュービットを3組に編成した9キャリアを用いて、1キュービットを符号化しました。
論理状態は式(2)に示すものの3倍です。このコードは次のような8つの対称的操作を持ちます(前述のものでは二つの対称操作
を持つ)。第一に、3キュービット3組において前述の
を一般化する6つの対称作用素を容易に見つけます。
第二に、3組がが反復されるという事実に対応する二つの他の独立の対称性を見つけます。すなわち、
および
。9キャリアに影響しうる27の異なるエラーのそれぞれは、異なるシンドロームに対応することを示すことは容易です(そしてそれ故に、論理状態を直交部分空間にマッピングします)。
復号化は、シンドロームを明らかにし、訂正できるようなエラーを知ることを可能にする上記8作用素を測定することによってなされなければなりません。このコードのための復号回路は、3キュービットに対する上記と同じ議論に従って容易に構築できます。
ショアによって提示されたコードは、決してエラーを訂正する最も効果的な方法ではないことを指摘することは興味深いことです。実際、次元
の巨大なヒルベルト空間を使用していますが、独立のエラーをマッピングするすべての部分空間に対応するのに十分な余地を持つ空間(この場合この目的のために2(1+3×9)=56だけを必要とする)を必要としているだけであることに注目します。
より小さいコードは開発されており、一般的な1キュービットエラーを訂正する最も小さいコードは5キュービットを必要とします。なぜならn=5は恒等式
を満足するからです。これはいわゆる「完全」QECCであり、次の対称作用素
を持ちます。
これらの対称作用素が有効なQECCの構成要素となることを示すためには、すべての独立のエラーが
と非可換な異なるパターンを形成することを示す必要があります(これは課題として残しておきます)。このコードのための符号化―復号化回路の構築は、前述のアイデアを一般化することで行うことができます。
量子エラー訂正コード理論の基礎をなす原理のより形式的な記述を与えることができます。
キャリアに符号化することで
キュービットを保護するコードを考えることができます。ここで、コード空間
(または論理空間)は、
キャリアの全ヒルベルト空間の
次元部分空間です。
は
の二次元要素のテンソル積であり、その要素が個々のキャリアの積状態にある自然基底を持ちます。これは作用素
の共通固有状態で形成される「物理基底」です(便宜上、この基底の状態を対応する作用素の固有値
によってではなく、
空間への射影の固有値
または
によってラベル付けします。かくして、ラベル
は作用素
の固有値
に対応します)。
さらに、
キャリアを、最後の
キュービットが状態を符号化するキュービットで、最初の
が補助キャリアであるような方法で順序づけます。それ故に、物理基底の状態は
の形式となります(ここで要素
は対応する固有値を格納し、添字
は物理基底の状態を同定するために用いられます)。
エラー訂正コードは物理的積状態
のコード空間
へのマッピングであり、
キャリアのエンタングル状態によって形成されています。幾分一般的な種類のコードは安定化作用素グループによって記述することができます。コードの安定化作用素はパウリ行列のテンソル積であるすべての作用素によって形成されたアベリアングループであり、固有値
の固有空間として
を持ちます。
要素の有限グループである安定化作用素のあらゆる要素は、
として示される
生成作用素を適切に拡大させることによって得られます。安定化作用素の要素はコード空間
において完全に縮退します(
内のすべての状態はすべての
について固有値
を持つ固有状態だからです)。
コード空間における基底を定義するために、パウリ行列のテンソル積が安定化作用素のすべての要素と可換である
個の付加的作用素
を選択します。これらの作用素
は論理状態
と結びついた
内の方向を定義しているので「論理ポインター」です(論理ポインターは安定化作用素と可換な作用素のグループに属し、標準化作用素として知られています)。
論理ポインターと合わせて安定化作用素の
生成作用素は、共通の固有状態がヒルベルト空間
の完全な基底を形成する可換作用素の完全集合(CSCO)です。量子数
によってラベル付けされたこの「論理基底」の要素は、
として示され、そこではビット要素
および
は、対応する固有値を同定し、添字
は論路状態を参照します。安定化作用素の生成作用素によって形成されたCSCOと論理ポインターは、
キャリアの源ヒルベルト空間を
次元論理空間
および
次元シンドローム空間
のテンソル積に分解する処方を定義します。
実際、論理基底の要素(
キャリアのエンタングル状態にある)は、
および
に属する状態のテンソル積です。すなわち、
。
に属する符号化状態は、
の形式の積状態でもあります。
に属する符号化状態も、
の形式の積状態です。
コードは、論理基底の状態への作用が論理シンドロームを変化させ、最終的にはシンドローム依存で
の論理状態を変換するいかなるエラー
に対しても量子状態を保護します。
(4)
ここで、
は集合的論理空間
に作用するユニタリー作用素で、
はシンドロームおよびエラーに依存する位相です。エラー
はシンドロームを
から
に変化させ、
はエラーと安定化作用素の生成作用素の可換パターンを保存するビット要素です(この要素の第j番目のビットは、エラーが
と非可換でゼロ以外の場合のものです)。
この理由は、論理状態に作用するとき、エラー
は
の場合に限り作用素
の固有値を変化させるということです。エラーを同定するために用いられたラベル
は任意であり、非縮退コードの場合に対して(それはここで考慮する唯一のものです)、単純に可換パターン
を用いてエラー
をラベル付けすることは常に可能です(すなわち、
を選択することができます)。
エラー
のいかなる作用に対しても(またはそれらのいかなる線形重ね合わせに対しても)訂正するために、最初に集合的シンドロームを測定すること(すなわち、オブザーバブル
を測定すること)によってエラーを検出することができ、その後対応する作用素
を適用することによってエラーから回復します。この検出−回復過程は便宜的に、誤りのある密度行列
から訂正された密度行列
への次のようなマッピングによって定義される量子操作として記述できます。
(5)
ここで和はすべてのシンドローム(
)の範囲を動き、各シンドロームに対する回復作用素は次のようになります。
(6)
構成に関しては、これらの作用素は恒等式
を満足します。
エラー検出−回復過程の記述は、完全に論理基底上に定式化されているので、これまでは基底の変更として単純に定義できるいかなる符号化または復号化操作も含んでいません。符号化作用素
は
キャリアの積状態によって形成された物理基底を、エンタングル状態によって形成された論理基底へマッピングするユニタリー作用素です。
従って、
は作用素
(その固有値は物理基底上の状態を定義する)を作用素
(論理基底上の状態をラベル付けする)に変換します。かくして、符号化作用素
は
のようになります。これを考慮して、作用素
の作用は次の一連の操作として物理基底において記述することができます。@)状態を復号化、A)最初の
キャリアで
を測定することによって物理基底におけるシンドロームを測定、B)測定結果が要素
であればシンドロームを元のゼロにリセットするシンドローム依存回復作用素
を適用、C)結果として生じた状態を符号化。
与えられたエラー集合を訂正する安定作用素コードを見つけ出すことは、エラーとの適切な可換パターンを持つ生成作用素を設計することを含むかなり困難な仕事です。一度生成作用素が見つけ出され論理ポインターが選択されれば、符号化あるいは復号化作用素は構築できます(安定作用素から符号化あるいは復号化回路を設計する戦略は知られています)。
回復作用素は符号化あるいは復号化戦略に依存し、通過するエラーによって符号化回路から明示的に見つけることができます。
上述のように、いかなるキャリアの位相エラーをも訂正する
キャリアを用いて
キュービットを保護する最も簡単なコードは、この一般的な安定化作用素コード類の特殊例と理解できます。その場合、訂正すべき基本的エラーは
です。コードの安定化作用素は
によって生成されるように選択できます。
各エラーと結びついた可換パターンは
(なぜならエラー
は
および
の両方と非可換だから)、
です(可換パターンに従ってそれらを順序づけているエラーを再度ラベル付けできることに注意)。図1に提示した復号化回路は次の特性を持ちます。
(7)
これらの特性は、論理基底においてエラー
の作用を完全に決定します。例えば、最後の恒等式は
であることを意味します。かくして、エラー
は、シンドロームを変化させるだけでなく、それを反転させることで論理状態を変更します。これはこのエラーに対する回復作用素は
であることを意味します。同じように、
であることを示して、どのように他のエラーが論理基底に作用するかを見つけることができます。
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