コラム

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 「コラム」ページの開設について
 既存のカテゴリーに入らない情報通信関連の話題、豆知識、エッセイ、ショートショートなど全般を対象とする肩の凝らないページです。皆様からの原稿をお待ちしていますので、ふるって投稿していただきますよう、よろしくお願い申しあげます。投稿は執筆者名(ハンドルネームも可)を明記の上、メールで事務局に送付してください。できるだけ添付ファイルなしの平文でお願いします。



【コラム20:Webサービス技術】         (2001/10/27作成:tuusinsya)

 10月24日付のITPro「ITレポート」に、「Webサービス対応うたう製品が続々登場」と題して、Webサービス技術に関する記事が掲載されていました。ニュースでも今後急成長する市場分野であると報道されており、基礎知識として役立つと考えますので要点をご紹介します。
[出典:http://itpro.nikkeibp.co.jp/members/NIT/ITARTICLE/20011024/1/]

1.Webサービスとは?

 Webサービスとは、XMLやSOAP(Simple Object Access Protocol)などインターネット標準技術を利用したアプリケーション間連携の手法、またはその手法に基づいて作成したプログラムです。インターネットを介して、Webアプリケーションを別のWebアプリケーションから呼び出し、部品のように自由に利用できるという利点があります。既存のアプリケーション間連携技術であるCORBA(Common Object Request Broker Architecture)やDCOM(Distributed COM)よりも柔軟な連携を可能にします。

 これまでWebアプリケーションとWebブラウザの関係は"サーバー"と"人"だったのに対して、WebサービスとWebアプリケーションの関係は"サーバー"と"サーバー"になっています。つまり、サーバー間で連携し様々な業務の自動化を実現できることが、今注目を集めている理由なのです。

2.Webサービスを実現する3つの標準技術

 Webサービス対応製品が急速に増えてきた理由の1つとして、SOAPやUDDI(Universal Description Discovery and Integration)、WSDL(Web Services Description Language)、といったWebサービスを実現する様々な技術の標準化が進んできたことが挙げられます。

(1) SOAP
 SOAPは、Webアプリケーション間連携を実現するプロトコルです。WebアプリケーションからWebサービスの機能を呼び出すのに使います。やりとりするデータのフォーマットはXMLで記述されているため、SolarisやLinuxのWebサービスをWindowsプラットフォームから利用することが可能になります。MicrosoftやIBM等が中心になって仕様の策定を進めています。

(2) UDDI
 UDDIは、必要なサービスをインターネットから検索し、それを呼び出せるようにします。常に決まった特定の企業間だけでなく、必要なサービスを提供する取引相手を見つけられるようにするために考案されました。Webサービスの内容や利用方法など、Webサービスに関する情報の管理は、UDDIディレクトリ・サーバーと呼ばれるサーバーが様々なWebサービスの情報を管理します。

(3) WSDL
 WDSLは、Webサービスがどのような機能を提供するのか、その機能を利用するためにどのような情報を渡す必要があるのかといったインタフェース仕様をXMLで記述したものです。いわばWebサービスが提供する機能の定義情報のようなものです。これをUDDIディレクトリ・サーバーに登録することで、利用者がWebサービスを発見できるようになります。

3.今後の課題

 ビジネス利用で大きな問題になるのが、現在のSOAP仕様ではトランザクションの規定がないことです。Webサービスを利用したアプリケーションでは、複数のWebサービスをまたがったトランザクション管理が必要なため、問題がより複雑になります。また、インターネットに公開されるWebサービスの品質をだれがどうやって保証するかも大きな問題です。提供する側も利用する側も安心できる環境を作ることが急務になります。



【コラム19:郡部の通信インフラ整備】        (2001/10/22作成:tuusinsya)

 総務省が8月、10月と相次いでブロードバンド化推進に関するレポートをホームページに公表しています。その中で「条件不利地域」に対する施策が述べられており、参考になると考えますので要点をご紹介します。
[出典] 
 1.「高速・超高速インターネット全国普及推進プログラム」(2001/08/03発表:総合通信基盤局)
 2.「全国ブロードバンド構想」(2001/10/16発表:総務省)

1.条件不利地域の超高速ネットワークインフラ

 中核は光ファイバ網と位置づけ、電力・鉄道事業者、地方公共団体が保有する光ファイバ網も、超高速インターネト網の一部として積極的に活用すべきとしています。超高速ネットワーク整備の経済的効果は、1世帯当たり年間55〜60万円と試算しています。また、諸外国では一部公共投資による整備や公共施設ネットワークの民間開放が進められていると述べています。

2.条件不利地域における公共投資による光ファイバ網整備の必要性

 (1)地理的要因によるデジタルデバイドの是正、(2)政府目標との関係、(3)民間事業者による整備が見込まれない地域の存在、(4)諸外国における取り組み、(5)地方公共団体の考え方―――を踏まえ、民間事業者による整備が進まない条件不利地域については、公共投資による光ファイバ網整備が望ましいとしています。

3.公共投資による光ファイバ網の整備

(1) 対象地域
 (a)光ファイバ網が十分に存在していないこと、(b)2005年までに民間事業者による整備が進まないこと、(c)整備された光ファイバ網を活用した一般利用者向け超高速インターネットの提供が見込まれること、(d)地方公共団体による積極的な取り組み―――に配慮する事が必要としています。

(2) 整備手法
 地域公共ネットワークの活用、PFIの活用、一定期間経過後の民間事業者への売却などにより、財政負担を極力縮減し、民間事業者の活力を最大限に活用するよう配慮すべきと述べています。整備形態としては、「国の直轄事業として行う」、「地方公共団体の事業として行い国が補助する」、「民間事業者に対する直接補助」など様々な形態が想定されるとしています。
 地域公共ネットワークについては、2005年度までに全国整備を図るため、地方公共団体に対し、具体的な整備計画の作成を要請するとともに、財政上の支援措置の確保を図るとしています。

 郡部は交換局までの距離が5km以上でDSLを利用できない地域が多く、ブロードバンドインフラとしては現状、FTTHまたはFTTC+無線LANしかないと考えます。民間通信事業者が採算性の成立しない地域にサービス提供することはあり得ず、また単価2k\/mの光ファイバケーブルを一般ユーザーが敷設し、ネットワークを構築することは極めて困難である以上、地域公共光ファイバ網を整備して民間及び一般ユーザーに開放する手法は、現実的な方法であると考えます。



【コラム18:ブラウザ・フォンの新規格】         (2001/10/13作成:tuusinsya) 

 10月10日付のITPro「ITレポート」に、「ブラウザ・フォンの新規格/PC並みのコンテンツが利用可能に」と題して、インターネット接続機能を備えた携帯電話の新規格に関する記事が掲載されていました。携帯電話もデータ通信の機能や速度が向上し、軽視できなくなってきました。基礎知識として役立つと考えますので要点をご紹介します。
[出典:http://itpro.nikkeibp.co.jp/members/NIT/ITARTICLE/20011010/1/]

1.ブラウザ・フォンの現状

 現在、携帯電話サービス会社は、各社独自の仕様でサービスを提供しています。コンテンツ記述言語でいえば、コンパクトHTML(NTTドコモ)、MML(J-フォン)、HDML(KDDI)と三者三様です。現行の通信方式は、インターネット標準とは異なる独自仕様のWAP1.0で、データ量を抑えるためにWAPゲートウエイを介してTCP/IPを変換し、携帯電話へ転送しています。携帯電話のデータ通信速度が上がってきたため、WAPゲートウエイがボトルネックになる可能性が出てきました。

2.WAP(無線アプリケーション・プロトコル)とは?

 WAPは、スウェーデンのエリクソンやフィンランドのノキアらが設立した団体「WAPフォーラム」が策定している国際標準規格です。通信方式やコンテンツ記述言語WML1などが規定されています。現行版はWAP1.0ですが、WAPフォーラムは8月1日、WAP2.0のパブリック・レビュー版を公開しました。正式な仕様は今年中に公開される見込みです。

3.新規格WAP2.0

 WAP2.0の核はコンテンツ記述言語と通信プロトコルです。コンテンツ記述言語WML2はWML1と異なり、インターネット標準のXHTML Basicを採用しています。XHTMLはHTMLをXML形式で定義し直した言語です。タグ・セットを追加することで、いろいろな用途に向けてカスタマイズし易いという特徴があります。XHTML BasicはXHTMLのサブセットで、携帯電話向けのサブセットを備えた仕様になっています。
 WML2はCSSをサポート。XHTML BasicとCSSの組み合わせによってパソコン向けのコンテンツのように、プルダウン・メニューやレイアウトの細かい指定が可能になります。WAP2.0はWML1をサポートすることで下方互換性を備えています。

 通信プロトコルはインターネット標準のTCP/IPを採用しました。携帯電話はTCP/IPを使ってWebサーバーに直接アクセスできるようになります。互換性を保つためにWAPプロトコルのスタックも備えますが、WAPゲートウエイを経由しない方法が基本になります。

 また、TCP/IP採用によりセキュリティも強化されます。WAP1.0では、携帯電話/WAPゲートウエイ間とWAPゲートウエイ/Webサーバー間で、暗号通信のために2つのプロトコルを利用するため、WAPゲートウエイで暗号の解読/再暗号化を行うことになり危険です。WAP2.0では、携帯電話とサーバー間でTLS(トランスポート・レイヤー・セキュリティ)通信するため、こうした危険はなくなります。



【コラム17:ブロードバンドコンテンツ(2)】      (2001/10/13作成:tuusinsya)

 10月12日付のasahi.comネット情報特集に、「ブロードバンド、テレビとの垣根なくなる?」と題して、興味深いブロードバンドコンテンツの紹介記事が掲載されていましたので、要点をご紹介します。
[出典:http://www.asahi.com/feature/K2001101201243.html]

1.AFLO [http://www.aflo.net]

 青山学院大学の学生が中心になって今年3月から始まりました。地元、東京青山の街を動画を使って紹介する手作りサイトです。古本屋のおやじさん、お気に入りのカフェなど、「地元に密着した学生ならではの視点で青山を伝える、インターネットの動画コンテンツのお手本を作る」とのコンセプトで活動しています。撮影技術も独学、サーバーも自作の高性能パソコン。今は11月始めの学園祭紹介番組の制作で多忙な毎日とのことです。

2.オンライン・レンタルビデオ

 キューピーは、ブロードバンド回線を使ったオンライン・レンタルビデオ店を目指すベンチャー企業です。NTTの局社内などにビデオの配信サーバーを置き、仮想店舗の役目をさせます。利用者宅にはテレビの上に専用の受信装置(STB)を置き、配信サーバーとDSL回線で結びます。
 利用者は好みのビデオを好きな時間にダウンロードします。独特の技術で圧縮、高速ダウンロードでき、専用STBで解読しながらVHS画質で再生できるとのこと。ダウンロードしたビデオはSTBに保存され、何回でも再生可能。「レンタル期間」が過ぎると自動的に消滅します。個人認証や課金もでき、実店舗の仕組みがそのままオンラインで実現できます。NTT東渋谷局にサーバーを置き商用試験サービスに入りました。



【コラム16:ブロードバンドコンテンツ(1)】      (2001/10/11作成:tuusinsya)

 10月10日付のITPro「記者の目」に、「ブロードバンドを生かし、アプリケーション配信が始まる」と題して、ブロードバンドコンテンツ紹介記事が掲載されていました。最近、ブロードバンドのキラーコンテンツに関する議論が盛んになってきており、参考事例として役立つと考えますので要点をご紹介します。
[出典:http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/ITPro/OPINION/20011010/1/]

1.アプリケーション配信サービスとは?

 サーバーに格納されているアプリケーションを、必要の都度クライアントがダウンロードして利用できるようにするサービスです。ブロードバンドをうまく利用しようとしているサービス、製品の一つ。従来の動画や音楽の配信、オンラインゲームなどとは異なります。

2.アプリケーション配信サービス事例

 日商エレクトニクスが11月に販売開始する「Stream Theory System」は、アプリケーション配信サービスを提供するためのツールです。クライアントはエージェントプログラム「プレイヤ」を導入、サーバーはアプリケーションを細かくブロック化して配信、プレイヤは受信ブロックを組立て、アプリケーションを起動します。配信されたアプリケーションはメモリー上のみで動作し、終了後ハードディスクには何も残りません。インストール作業は不要で、使用頻度の低い高価なアプリケーションを購入せずに、オンデマンドで利用できます。

 ニューズネットが年内開始予定のサービス「WebOS」は、ターミナルサービスを利用してアプリケーションを配信するサービスです。Webブラウザからターミナルサービスにアクセスし、仮想デスクトップを利用します。メールやスケジューラのほか、WordやExcel等が利用できます。ブラウザ側にActiveXコンポーネントをダウンロードして操作します。本格的に利用すれば、クライアント側にソフトウエアが不要になります。

 このようなアプリケーション配信の仕組みは、業務システムにも利用できます。専用クライアントプログラムの欠点である、ダウンロードやインストールといった導入の手間が解消され、バージョンアップなどのメンテナンスも容易になります。

 今後、新しいブロードバンドコンテンツが相次いで出てくると期待されますので、順次ご紹介していきたいと考えます。



【コラム15:光IPネットワーク技術】    (2001/09/22作成:tuusinsya)

 9月17日付のIT Pro Specialに、「ブロードバンドの明日が見える」と題してブロードバンドの基盤技術「光IPネットワーク」の技術開発の現状と課題に関する解説記事が掲載されていました。基礎知識として役立つと思いますので要点をご紹介します。
[出典:http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/pr2/nec/010917/]

1.増大するトラヒック量

 ブロードバンドの本格的な普及により、バックボーンとなる基幹ネットワークのトラヒック量は指数関数的な伸び(5年後に6倍以上)が予測されています。基幹ネットワークそのものは、既に光ファイバが敷設されていますが、今後、一層のトラヒック量の増大に対応するためには、今まで以上の広帯域化の実現が求められています。
 このような背景から、大容量伝送技術として、WDM(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重)の研究開発が急速に進んでいます。

2.WDMの課題と改善のための技術

 通信事業者の幹線向けの波長分割多重技術であるD-WDM(Dense WDM)は、WDMをより高密度化して、テラビット/秒級の超大容量伝送を実現します。現在商用化されているのは1.6Tbps程度ですが、実験レベルでは10.9Tbpsに達しています。これを実用化するにはWDM伝送システムにおける伝送制限要因を排除する必要があり、伝送特性改善のための開発・研究が進められています。

 伝送制限要因としては、(1)光増幅器からの自然放出光の累積による光雑音、(2)光信号の偏波と光部品の特性によって損失を生じる偏波依存性、(3)波長によって光ファイバ中の伝搬速度が異なることで波形ひずみを生じる波長分散、(4)光ファイバ中での各種非線形効果により波形ひずみや干渉雑音を生じる非線形効果などがあります。

3.伝送特性改善のための技術

(1)分散補償技術
 光ファイバの敷設に際し、局所的には大きな波長分散を与え、適当な箇所で逆符号の分散を導入し、エンドツーエンドの総分散量を波長分散許容値以下に提言します。これにより互いに反する効果を持つ波長分散と非線形効果双方の問題の影響を最小に抑えます。

(2)変調技術の適切な選択
 伝送距離を制限する光雑音に対してはRZ方式、大容量化を妨げるクロストークにはNRZ方式というように、ネットワーク全体の構成、ファイバや機器の特性によって、適切な変調方式を選択する必要があります。CS-RZはRZより長距離伝送・狭帯域利用に適しています。

(3)S帯光増幅技術
 波長多重用光増幅器は、多波長を一括して増幅する必要があるため広い利得帯域が要求されます。S帯(1.49μ帯)光アンプは、利得ピ−クを1.46μ帯から1.49μ帯へ効率的にシフトし、C帯(1.55μ帯)、L帯(1.58μ帯)に次ぐ光ファイバの低損失帯であるS帯の有効利用による広帯域使用伝送を可能とします。

(4)ラマン増幅技術
 伝送区間内の前半/後半で異なる種類の光ファイバを組み合わせ、非線形効果の一つである誘導ラマン散乱を抑圧するとともに、1.49μ帯に発生する過剰な損失を分布ラマン増幅技術によって補償することで、伝送の長距離化を実現します。

(5)誤り訂正(FEO:Forward Error Correction)技術
 冗長ビットを付加することで、誤りが生じたビットを特定し訂正を可能とします。これによって回線の品質を向上させ、高信頼性を獲得することが可能になります。

4.フォトニックネットワークとIP化

 電気的処理をせず、光信号のままで波長ごとに経路を振り分ける波長ルーティング技術などの光処理を利用したネットワーク技術を「フォトニックネットワーキング」と呼びます。「高インテリジェント性」、「広帯域性」、「低コスト化」の要求に対して、フォトニックネットワーキングと光ネットワークのIP化がサービス向上の重要なポイントになります。

(1)フォトニックネットワークの利点
 転送すべき情報の識別に波長を使い、受動光学素子により経路振り分けを行う処理速度が向上し、伝送特性の向上に繋がります。また、電気処理による速度・容量の制約によらず長距離・大容量の伝送を可能とします。

(2)光ネットワークのIP化の利点
 多くの階層・プロトコルを利用する既存通信環境を簡略化し、構築及び運営コストを削減します。データ・音声・動画などすべてのメディアのIP化により、統合された通信環境を実現します。また、高速/高信頼性に加え、QoS、セキュリティを実現します。
 IP化に関連して、IPをWDM装置に直接接続する「IP over WDMリンクネットワーク」を用いた機器も実用化されています。また、OXC(Optical Cross Connect:光クロスコネクト)を導入し、電気ノードの処理負担を減らしたネットワーク「IP/MPLS over WDM光パスネットワーク」の実用化も行われています。

(3)ノード技術
 ノード技術にはOADM(Optical Add/Drop Multiplexer)、OXCがあり、トランスポンダ数削減・IPルータの小規模化を可能とし、より低コストな光IPネットワーク構築を実現します。OADMは安価・低柔軟性のシリアルタイプと高価・高柔軟性のパラレルタイプがあり、主にメトロネットワーク、長距離ネットワークの中間ノードで用いられています。
 OXCは光の波長単位に分岐を行い、より柔軟なネットワーク構築や障害発生時の別ルート分岐を可能とします。OXCは電気スイッチベースと光スイッチベースに大別されますが、光スイッチベースOXCはまだ製品化されておらず、現在広く研究が行われている状況です。



【コラム14:セマンティックWeb】    (2001.09.20作成:tuusinsya)

 9月18日付のIT Pro「記者の目」に、「セマンティックWebの時代が近づく」と題して興味深い記事が掲載されていましたので要点をご紹介します。

[出典:http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/ITPro/OPINION/20010918/1/]

1.セマンティックWebとは?

 Webコンテンツなどにセマンティック(意味)情報を持たせ、コンピュータが理解できるようにするもので、ユーザーの利便性の向上やサービスの高度化が図れます。
 Web関連の標準化機関W3Cで最も注力しているテーマで、米国防総省も軍事用に開発を進めています。国内でもINTAPなどが中心になって実現に向けて活動しています。

2.セマンティックWebの記述言語

 記述言語は、データの意味やデータ間の関連を定義できるようにするRDF(Resource Definition Framework)です。「主語(リソース)、述語(属性)、目的語(値)」という構文でデータの意味を記述します。例えば、主語=AサイトのURL、述語=タイトル、目的語=AサイトのHPとすることで、そのURLがAサイトのHPであることを定義できます。

3.セマンティックWeb世界のイメージ

 RDFを使ったWeb上のより複雑な情報をコンピュータが的確に解釈、自動処理できるようになります。エージェントに命令を与えれば、エージェントがインターネット上のリソースにアクセス、自動処理するようになります。つまりコンピュータ向きのWebになります。

 有線及び無線ブロードバンドインターネットの発展、情報家電の普及、ロボット技術の進展を考えれば、無線でインターネットに繋がったホームロボットがエージェントの機能を持つようになる日も近いと思われます。
 それとも、人が寝静まった夜更けにむっくり起きあがったホームロボットが、勝手にインターネットにアクセスし、ロボット専用のWebサイトをサーフィンするのでしょうか?



【コラム13: 韓国ブロードバンド】   (2001.09.13作成:tuusinsya)

 9月10日付のRBB TODAYコラムに、「韓国ブロードバンド普及の"裏側"」と題して、韓国のブロードバンド普及状況とその理由について、明快に述べている記事がありました。日本との対比で参考になると思いますので要点をご紹介します。

[出典:http://www.rbbtoday.com/column/arimoto/20010910/index.html]

1. 韓国のブロードバンド普及状況

 韓国情報通信省によると、2001年7月現在の利用者数は、ADSL400万人、CATV200万人、合計600万人。2000年末の約400万人から半年で200万人増加。人口4500万人に対する普及率は約13%。2005年には70%に達する見込み。
 日本のブロードバンド普及率は現在、人口比率で約0.5%2005年にユーザー数1200万人で普及率10%の予想。これは日本のIT戦略会議の目標と同等。つまり、韓国ですでに達成された数値を、日本では4年後に実現することになる。

2. 韓国でブロードバンドが普及している理由

(1) 技術面では、国策で光ファイバーのバックボーンネットワークを構築し、それを低価格で利用できたこと。それを利用するビジネスとしてPC房(ピーシーバン)が出始め、PC房でのオンラインゲームに火がつき、と同時にブロードバンドの需要が増して、その環境を家で使いたいとの要求から家にADSLやCATVを引く人が増えたこと。現在では、新しいビルを建てる際には高速回線の整備が法律で義務づけられている。

(2) 情報教育の面では、国が積極的にインターネット教育を実施していること。1万82の学校でインターネット接続環境が整備されており、全生徒・学生・先生にE-mailのアドレスが提供されている。街角のインターネット体験教室では、昼間にインターネット教育を実施すれば国から補助金が出るし、受講者も国の補助が受けられ、主婦やお年寄りが利用している。また、徴兵制度により20歳から2年間の軍隊所属中、全員にインターネット教育する。このように国民のすべてにインターネットを使う基礎ができている。

(3) アプリケーション面では、PC房で流行ったオンラインゲームのStarcraftがもっとも普及している。これはISDNなどのナローバンドでは帯域不足で動作せず、ブロードバンド環境でのキラーアプリケーションになっている。その他、すべての放送局がインターネット放送をしており、芸能人のビデオクリップなどをサービスしているプロバイダも存在する。ネットでの株取引は世界のトップレベルに達している。

(4) 住宅事情の面では、国民の60%がアパート暮らしで、集合住宅では法律で義務づけられたブロードバンドアクセス環境が整備されている。

(5) 国民性の面では、韓国人の気質がインターネットに向いていること。韓国人は考える前に行動を起こすと言われ、インターネットも理屈ではなくて「まず、やってみる。やってみてダメだったら止めればよい」との考え。このような気質が新しいことに対する挑戦心となり、ブロードバンドの普及を後押し、牽引している。これは非常に多くのベンチャー企業が誕生している要因となっている(2000年では9331社)。

3. ブロードバンドアプリケーションに期待

 ブロードバンド普及のキラーアプリケーションに関する議論があるが、インターネットの成り立ちを考えると、メールやWebがあったからインターネットが発明されたのではなく、インターネットがあったからメールやWebが誕生し、これだけ普及したのである。インターネットインフラがあったからそれを使う人がいて、その中でアプリケーションが開発されたのである。
 同様に、ブロードバンドインターネットが整備された韓国は、これが開発環境になり、それを日頃から利用している人が自然にアプリケーションを開発していく。韓国はこれからブロードバンドアプリケーションの領域に入り、その一大生産拠点になっていくであろう。我々の想像の範囲を越えるようなアプリケーションが出てくることを期待したい。

4. 街角にある公衆インターネットアクセス端末

 韓国の街角には公衆インターネットアクセス端末、兼電話がある。この端末はVoIPによる通話のほかにインターネットアクセス機能を持つ。この端末が町のあちこちに設置されており、IT先進国を強く表している。



【コラム12: GridComputing】   (2001.08.06作成:tuusinsya)

 8月5日付のIT Proコラムに、「グローバルネットワークの未来!?」と題してGrid Computingに関する記事が掲載されていました。【コラム9:P2P】で紹介したGnutellaの政府・企業版のようで興味深いと思いますので、要点をご紹介します。
[出典:http://itpro.nikkeibp.co.jp/]

1.Grid Computingとは

 Grid Computingは、"Power Grid(電力供給網)"に由来する呼称で、電力と同じように、コンピューティングパワーがネットワークから必要なだけ供給され、利用者はその利用料を支払うという考え方です。さらに、コンピューティングパワーだけでなく、広範囲なネットワーク上でファイルやアプリケーションを多数の利用者が共有できるという包括的な概念を包含しています。

2.主な研究開発プロジェクトの趨勢

 Grid Computingの主な研究開発プロジェクトはこれまで、米国エネルギー省やNASAなど、政府の研究開発機関が中心になって進めてきました。開発されたネットワークプロトコルは"Globus"と呼ばれ、フリーソフトとしてインターネット上で公開されています。

 しかしここにきて、Grid Computingの開発の方向は企業ビジネスに向かいつつあります。既に米マイクロソフトはGlobusプロジェクトへの支援を打ち出しており、日本のソフトバンクはGrid Computingを手がける新興企業United Devicesに投資しています。他にも製薬会社のファイザーや航空機・軍需メーカーのボーイングをはじめ、世界各国の様々な業界の巨大企業がGrid Computingの実験を始めています。いずれも、大規模な科学シミュレーションへの応用を主眼に置いています。

 IBMも次世代の巨大市場を予感し、Grid Computingに参入しています。既に英国とオランダの政府から科学研究のためのGrid Computing Systemを受注しました。同社は手始めに約40億ドルを投資して、50台のサーバーから成る実験ネットワークを構築します。

3.Grid Computing 実現における課題

 Grid Computing を実現する上で最大の課題は、セキュリティをどう保証するかにあります。インターネットのようなグローバル・ネットワーク上でコンピューティング資源を共有するとなると、セキュリティ確保は至難の業になると思われます。



【コラム11:光ファイバーの伝送容量】   (2001.08.06作成:tuusinsya)

 8月3日付のIT Proコラムに、光ファイバーの伝送容量に関する記事が掲載されていました。光ファイバー通信の技術動向を知る上で参考になると思いますので、要点をご紹介します。
[出典:http://itpro.nikkeibp.co.jp/]

1.シャノンの定理による伝送容量の理論限界

 シャノンの定理は、ディジタル通信の伝送容量の理論的限界を示すもので、一般的な通信システムに当てはめると、使用帯域の7〜10倍になります。光ファイバー通信で使うレーザーの波長は、1300nm付近と1550nm付近で、長距離通信では1530〜1562nm(Cバンド)と1570〜1602nm(Lバンド)の二つの範囲です。

 Cバンドの帯域は4T(T=1000G)Hzで、理論限界容量は40Tbpsになります。米ベル研究所の試算では、100Tbpsまで可能と言われています。

2.現状の技術レベル

 1波長伝送では実験レベルで1.28Tbpsが現状の最高値で、実用レベルでは40Gbpsの製品化が始まった段階のようです。理論限界から見れば、光ファイバーのポテンシャルを十分に引き出せておらず、光ファイバー通信の技術はまだ発展途上と言えます。

 現在、長距離・大容量通信では、DWDM(dense wavelength division multiplexing:高密度波長分割多重)が主流です。最新のDWDM装置は、CバンドとLバンドにそれぞれ80波ずつ、合計160波を詰め込み、それぞれの波に10Gbpsの信号を載せてトータル1.6Tbpsの伝送容量を生成します。研究レベルでは、273波それぞれに40Gbpsを載せ、10.9Tbpsを実現するDWDM装置も登場しています。



【コラム10:"より安く、より速く"への架け橋】  (2001.08.03作成:tuusinsya)

 8月2&3日付のIT Proコラムに、光IPネットを支える新技術「GMPLS」の解説として題記の記事が掲載されていました。ブロードバンドネットワークの技術動向を知る上で参考になると思いますので、要点をご紹介します。
[出典:http://itpro.nikkeibp.co.jp/]

1.GMPLSとは

 GMPLS(generalized multi-protocol label switching)は、光信号を電気信号に変換することなく、波長を識別することによってスイッチング(交換)する技術で、IP-VPN(IP-virtual private network)などに利用されているMPLSを、光ネットワークにも利用できるように拡張した技術です。技術仕様は標準化途上にあり、プロトタイプに実装しデモを実施できる段階にあります。
6月に米国アトランタで開催されたSupercomm2001に、NTTの未来ネット研と米ジュニパー・ネットワークスがGMPLSを出展、デモを実施しました。

2.バックボーンの大容量化を支える

 アクセス回線の高速化に対応してバックボーンネットワークも高速性を要求され、DWDM(高密度光波長分割多重)による大容量化が図られています。しかし、光IPネットワークを構築するにはDWDMだけではなく、多地点を結ぶバックボーンネットワークを構成するための光クロスコネクトスイッチが必要になります。

 ところが、光クロスコネクトはIPと親和性がなく、通信事業者は物理的には一つのネットワークであるにもかかわらず、実質的には光とIPの二つのネットワークを運用管理しなければならず、大規模かつ複雑なネットワーク運用における大きな足枷になっていました。

 この打開策として登場してきたのがGMPLSです。光クロスコネクトにGMPLSを実装したスイッチングルータを使うと、光信号のままでスイッチングできると同時に、経路選択や決定はIP技術で実現できるようになります。

3.ラベルスイッチの利点

 GMPLSのベースであるMPLSは、宛先が同じIPデータを一つのトラフィックフローとみなし、フロー自体にラベルを割り当てて、ラベル情報をもとにスイッチングする技術で、利点は次の3つです。
(1) スイッチング処理の高速化
(2) IPと下位レイヤーのネットワークの一元的管理・制御、スケーラビリティの確保
(3) 経路制御・帯域制御などのトラフィックエンジニアリングの実現

4.GMPLSの機能

 MPLS対象のATMやフレームリレーなど、パケット多重型のネットワークだけでなく、TDM(時分割多重)やWDM(波長分割多重)のネットワークも対象とします。最も特徴的なのが、光波長を経路制御の情報として扱える「MPλS(マルチプロトコル・ラムダ・スイッチング)」です。これは、多重化された波長の一つ、またはTDMのタイムスロットをラベルとして扱い、仮想パスを設定して光信号のままスイッチングします。

 ネットワークの制御については、実データとは別に制御用のチャネルを設定し、GMPLSルータ間を結びます。この制御チャネル上でIPベースのシグナリングや経路制御を実行します。クロスコネクト部にスイッチング用の経路情報だけを提供するため、実データの転送処理は光、制御はIPという仕組みを実現できます。さらに、LSPごとに物理的な経路を切り替えるなどのトラフィックエンジニアリングも可能になります。

5.光IPネット化の2つのフェーズ

(1) 第1フェーズ(オーバレイモデル
ユーザーがコアの光ネットワークをブラックボックスと見て接続する形態。ユーザー側ネットワークとコアネットワークを分ける考え方で、オーバレイモデルと呼ばれます。両ネットワークの接続はOUNI(optical user network interface)を介して行います。この場合GMPLSは必ずしも必要ありません。

(2) 第2フェーズ(ピアモデル
ISP同士が相互接続する場合のように、それぞれのネットワークが対等で互いに経路情報をやりとりする接続形態。この場合、異なる光IPネットワーク同士を相互接続することになるため、IPレベルでネットワークを対等に接続するためにGMPLSが必要になります。



コラム9:ピアツーピア(P2P)】  (2001.07.31作成:tuusinsya)

 音楽業界を揺さぶったNapster事件で注目されたP2P型ネットワーキングの話題2件を紹介します。

1. 検索バディ

  [出典:http://www.kensakubuddy.com]

 検索サイトではなく、検索された情報を共有しようというP2P的な発想から生まれたサイトです。検索自体は既存の検索サイトの機能を利用しています。サイトの画面上で検索を実行すると、検索結果と共に「バディリスト」が表示され、既に同じキーワードで検索した人のコメントや、検索情報に対する得票数が読めるようになっています。また、自分でもコメントの書き込みや、得票アイコンをクリックして検索情報に投票することができます。
たいていの場合、数人の人が既に検索していて、参考になるコメントがあります。試しにYahoo!検索を使って"ブロードバンドコミュニティ"のキーワードで検索すると、15件くらいのサイトが表示され、「日本ブロードバンドコミュニティ」もその中に出てきます。まだコメントが書かれていなかったのでついでに書き込みをし、得票アイコンをクリックしておきました。皆さんも一度試してみてください。

2.Gnutella

  [出典:http://www.atmarkit.co.jp/fwin2k/experiments/gnutella_for_admin/gnutella_for_admin_0.html]

 Napsterは交換ファイルが音楽関係に限定され、ファイルのアドレスを管理するサーバーが必要でしたが、Gnutellaは交換ファイルに制限がなく、管理サーバーも一切ない点で、真のP2P型ネットワーキングを実現していると言えます。

 通信メカニズムの要点は、自分の知っている他のホストに検索コマンド(Pingパケット)を送り、コマンドを受け取ったホストは、IP、ポート番号などのホスト情報や、自分の持っているファイル一覧から検索した結果(Pongパケット)を返すと共に、そのコマンドを他のホストへも中継し、その結果も同じルートを遡って中継されながら返ってくるということです。つまり、ねずみ講式にコマンドやその結果を送り中継しているわけです。無制限の中継を止めるための歯止めとして、接続ホスト数を最大4、中継する最大ホスト数(ホップ数)を7に制限しています。それでも、各ホストは自分だけでなく他のユーザーのコマンド中継も行うため、ネットワークのトラフィックは相当多くなります。つまり、ブロードバンド通信網が必要だということです。

 私が住んでいる通信過疎地では、ダイヤルアップでしかネットに接続できませんので実行できそうもありません。ADSL以上の通信環境にお住まいの方は、Gnutellaサイト(http://gnutella.wego.com/)からソフトをダウンロード(無料)して、試してみてください。

 ファイルの検索には、直接接続しているホストにQueryコマンドを送信します。コマンドの引数には要求する最低通信速度と検索キ−ワードが含まれていて、Pingと同様に順次中継されていきます。Queryコマンドの条件に合致するファイルを持っているホストは、Query Hitコマンドを返します。Query Hitは、Pingに対するPongと同じように、Queryコマンドが送られてきたルートを遡って発信元に戻ります。Query Hitコマンドの引数には、条件に合ったファイルの総数、待ち受けTCPポート番号、IPアドレス、接続通信速度、ファイル名とサイズ、ファイルインデックスが含まれます。

 ファイルのダウンロードには、Query HitコマンドにあるIPアドレスのホストに向けて、直接TCPコネクションをオープンします。次にGetコマンドを送り、受け取ったホストは応答を返しファイルを転送します。これらのコマンドはHTTPプロトコルのコマンドと似た形式になっています。

 自分のホストがインターネット側にあって、相手のホストがファイアウォールやNAT等の環境内に置かれている場合は、相手側(ファイル提供側)から接続を確立することにより、ファイルを転送します。即ち、ファイル検索要求を送信し、Hit応答が返ってきてTCP接続要求に失敗した場合、代わりにPush Request要求を通常のルートを使って送信します。引数には、ファイルを受信するホストのIPアドレスやポート番号などが含まれます。Push Request要求も中継されながらルートを通りファイル提供側に届きます。そして、ファイル提供側からファイル受信側に対してTCP接続を確立し、ファイルを送信します。

3.P2Pネットワーキングの位置づけ

 P2PはNapster事件で注目されましたが、通信方式自体は特に目新しいものではなく、古くからあった方式です。現在の商業ベースのインターネットを支えるサーバー/クライアント方式に対して、すべてのホストが対等である点でむしろ本来のインターネットの理念を体現しているものと言えます。また、全世界の電算資源の有効活用という観点からは、有用な方式と言えます。この事例として地球外知的生命体探査プロジェクトの「SETI@home」があります。
 P2Pの本命であるGnutellaの普及を促進するべく活動しているサイトは世界中にたくさんあり、日本でもNPOのジェヌーテラ(http://www.jnutella.org)が活動しています。

 P2Pの問題はサーバーのような管理ノードがないため悪用されやすいこと、ねずみ講式のコマンド中継を行うため帯域を占有しトラフィックが多くなることにあります。トラフィックについては、ブロードバンド通信網が構築されていれば解決されると思われます。また、管理についてはなんらかの規制をかける方式が検討されているようです。

 1年未満で2000万人のユーザーを獲得したNapsterに刺激されて、P2Pを使ったファイル共有サービスなどを事業化しようとする動きがあるようです。P2Pは、本来非営利の情報交換や共同電算に向いている通信方式なので、商業ベースで使うのは邪道だと思いますし、事業化には実際的な問題も多いようです。事業化における問題点については、ZDNN(http://www.zdnet.co.jp/news/0007/25/p2p1.html)に詳細なレポートがありますので、興味がある方は参照してください。



【コラム8:コンドミニアム・ファイバ…カナダ・モデル】(2001.06.15 作成:tuusinsya)

 ネットワークは通信事業者や行政が構築し、ユーザーは金銭と引き替えにそのサービスを受けるだけ、というのが私達の一般常識です。しかし、この常識を覆しネットワークに対するパラダイムシフトを引き起こす動きがカナダで起こっています。
地方のブロードバンド化を進める上で、極めて示唆に富む考え方と取り組みであると考え、その要点をご紹介します。ぜひ、下記出典の原論文をご一読ください。
[出典:http://www.glocom.ac.jp/odp/library/59.pdf]

1.カオの法則

 半導体チップの世界で有名な法則(経験則)である「ムーアの法則」に対し、光ファイバの世界では「カオの法則」があります。WDM(波長分割多重)方式において、光ファイバ1本当たりの伝送容量=(波長当たりの伝送速度)×(多重度)で与えられます。 「カオの法則」は、第1項を小さく、第2項を大きくすることを主張します。

 理由は、10Gbps以上の高速化では、光非線形効果による伝送効率の低下が大きいためです。 従来、高速データ伝送速度のWDM方式が主流である理由は、波長数を増やすのに必要な部品が少なく、データ伝送速度向上が技術目標となっていたためです。最近では波長可変型の半導体レーザーや、1000チャネルの合分波装置などが開発され、「カオの法則」に沿って伝送容量を大幅に拡大できるようになっています。

2.ネットワークの構成法

 波長当たりの伝送速度を1Gbps、多重度を1000、光ケーブル1本の収容ファイバ数を1000とすると、ケーブル当たりの伝送容量は1ペタビット/秒(100万Gbps)となります。このあり余るほどの豊富な伝送容量を使えば、従来のような信号の多重化や交換処理のための複雑な電気回路が不要になり、上記例の1000波長×1000本のファイバを、あたかも100万本の独立した伝送路のように使用できることになります。

 この考え方に基づいて、カナダのネットワーク・エンジニアや政策担当者たちは、次世代の光ネットワーク構築とその利用に取り組んでいます。

3.カナダの挑戦

 民間主導の非営利団体CANARIEが、次世代ネットワーク構築で注目を集めています。政府、業界、学界などと協力しながら、カナダにおけるインターネット発展を促進することを目的とした組織です。2000年11月末のCANARIEワークショップの報告では、「ユーザ主導のネットワークをいかに構築するか」という共通の議論が多く見られました。

 もはや通信事業者やISPがコントロールするようなネットワークの時代ではなく、ユーザが自らコントロールするようなコミュニティ・ネットワーク、さらには自ら所有するようなネットワークの構築が視野に入りつつあるということです。事業者の競争に任せていれば、利益の見込めない地域ではいつまでたっても先進的なサービスの展開を見込めない。そうした地域にもサービスを提供するために、政府や非営利組織が重要な役割を果たし得ることが、カナダを初めとする事例で紹介されています。

 CANARIEが触媒となって湧き起こってきた様々な動きは、三つのレベルのネットワークに影響を及ぼしています。第一は、国家規模のバックボーンネットワーク(カナダのCA*net3、米国のインターネット2)、第二は、ORANと呼ばれる州単位のネットワーク、第三は、いわゆる「コミュニティ・ネットワーク」と呼ばれるローカルな単位のネットワークです。

4.コンドミニアム・ファイバ

 CANARIEのネットワーク構築においてカギとなる概念が「コンドミニアム・ファイバ」で、「ユーザが共同管理する光ファイバ」を意味します。低コストのコンドミニアム・ファイバは、今日の電気通信インフラを根底から変える可能性を持っています。ネットワークのコストを激減させ、「ユーザ主導のネットワーク」の発展を可能にします。現在銅線でつながっているカナダの殆どの学校を、DSLやT1回線よりもはるかに安い価格の光ファイバでつなぐことも可能になります。

 コンドミニアム・ファイバは、自律的なネットワークのピアリングというインターネット・モデルを、光通信の領域にまで拡大することにもつながります。それは光通信の世界の常識を覆すことになります。光のスイッチングと波長のルーティングは単一のキャリアがコントロールする「接続サービス」であるという前提が通じなくなることを意味するのです。

 未来の電気通信インフラは、ユーザが所有する無数のコンドミニアム・ファイバでできており、そのネットワークは長距離の波長多重システム上で「ユーザが所有する」波長によって相互接続されている。「カオの法則」が現実化するのです。

5.CA*net4の哲学

 CANARIEはカナダの高速インターネット・バックボーンとしてCA*netを構築しました。その後順次アップグレードされ、現在はCA*net3になっています。CA*net4は次世代ネットワーク構想で、その哲学はつぎのようにまとめられます。

(1) 研究・教育ネットワークとしてのCA*net4は商業利害の先を行くネットワーク技術の開発を行わなければならない。
(2) ユーザが自らのパソコンを管理するように、ユーザ自らがネットワークを管理する。管理対象はファイバのみならず、ファイバの中を通る波長も対象とする。

 この哲学には、ネットワークの考え方に関する前提の大きな転換が見られます。伝統的な光ネットワークは、中央が波長の管理・運営を行うというパラダイムの上に築かれています。それに対し、ユーザ主導の光ネットワークは、ユーザが波長を所有し管理するというパラダイムの上に築かれています。そして、他のネットワークとの交換(相互無料使用)を通じて、全域に拡大していくのです。

 これはピア・ツー・ピアのネットワーク、即ち、商業ベースの複雑なネットワークに発展する前の、本来のインターネットへの回帰に通じるものです。 このようなカナダモデルを日本にそのまま適用することはできないでしょうが、その考え方には私達の常識を覆し、ネットワーク構築のあるべき未来像を顕現する力があると考えます。日本の環境に適合した"ジャパンモデル"とでもいうべきものを編み出す知恵が欲しいところです。



コラム7:すべてはイーサネットになる】 
(2001/06/11作成:tuusinsya)

 6月7日付の「IT Pro記者の眼」に、ネットワークの基盤技術の変遷に関して題記の記事が掲載されていました。ブロードバンドネットワークの技術動向を知る上で参考になると思いますので、要点をご紹介します。
[出典:http://itpro.nikkeibp.co.jp/]

1.イーサネットが”新技術”として脚光を浴びている理由

(1)長距離化/広域化

 長距離化は、電気信号を光信号に変換するメディアコンバータ(MC)で実現されます。イーサネットのデータフレームをそのまま20〜40km伝送できます。ファイバ1芯で送受信可能なMCをNECなど数社が発表済み。広域化については、通信事業者各社が企業ユーザー向けに「広域イーサネットサービス」を発表しています。企業の各拠点のLANをMC経由で通信事業者の局に置くLANスイッチに収容し、バーチャルLAN機能で各ユーザーグループを切り離して実現するものです。

(2)高速化

 高速化は最新仕様の10Gbpsのイーサネットで実現されます。イーサネットはフレーム単位でデータを伝送する統計多重的な通信方式なので、単純な高速化が可能です。通信事業者の基幹網で使われているSONET/SDHは、電話回線を基準に回線を束ねることで高速化してきたため、複雑な時分割多重の仕組みが必要です。

(3)低コスト化

 (1)も(2)も突き詰めれば低コスト化に繋がります。イーサネットは一般企業を対象としたLAN市場で培われてきた技術であり、量産効果を見れば通信事業者向けの通信機器の比ではありません。既存の高速ディジタル専用線などで使う「ONU」(optical network unit)と比べ、イーサネット技術を使うMCの方が安くなりそうです。有線ブロードネットワークス、NTT、東京電力など、FTTHサービスを計画している事業者のほとんどがMCを採用する見込みです。同様に、10Gbps(OC-192)のポートを備えるSONET/SDHのノード装置より、10Gbpsイーサネットのインタフェースを持つLANスイッチの方が安くなるでしょう。

 さらに、UNI(user network interface)がイーサネットになる点もコスト低減に繋がります。高速ルーターでT1(1.5Mbps)やOC−3(155Mbps)などのインタフェースモジュールは、ギガビットイーサのモジュールよりもかな割高。企業ユーザーがWANと接続する部分にT1やOC−3を使わずに済めば、その分機器コストを削減できます。

 LANはもとより、今後はアクセス回線と通信事業者の基幹ネットワークにもイーサネットが浸透していき、結果として、ネットワークはすべてイーサネットになるというわけです。

2.イーサネット化の加速要因ー[Everything over IP]

 インターネットの爆発的な普及で、IPが標準的なネットワーク層プロトコルの地位を確実にした点も、イーサネットの浸透に大きな役割を果たします。例えばSONET/SDHによる従来の電話に対して、VoIP(voice over IP)技術によるIP電話が発展しつつあります。(既にフュージョンコミュニケーションズが全国展開している)。このような環境になれば、基幹網をSONET/SDHからイーサネットに置き換えることも可能になります。

 大量のデータを格納するストレージシステムの世界でも、同様の現象が起こりつつあります。SAN(strage area network)を、これまでのファイバチャネルなどの特化したインタフェースに対して、SCSIコマンドをIP上で伝送する「iSCSI」(internet SCSI) の標準化が進んでいます。狙いはより安いイーサネットを利用し、LANとSANを一元的に運用管理することです。

 イーサネットには根本的に解決できない問題(ブロードキャストの扱い)や、QoS機能などまだまだ未熟な点が多いという意見に対しては、次のようなあるセミナー講師の言葉があります。
 「『色の白いは七難隠す』といいますが、ネットワークの世界ではスピードが速いと”七難”を隠すんですよ」−−−。
 

 
コラム6:ブロードバンドのインフラの担い手は?
 (2001/06/07作成:tuusinsya)

 6月5日付の「IT Proフォーラム第8回」に、ブロードバンドの全国展開に関して題記のアンケート調査結果が掲載されていました。各種企業、団体に所属するITのプロフェッショナルを対象に実施されたものです。興味深い結果が示されていて参考になると思いますので、要点をご紹介します。[出典:http://itpro.nikkeibp.co.jp/]

1.ブロードバンド使用に対する気持ち

 「ブロードバンドを使いたいのにサービスがない。なんとか提供して欲しい」・・・・・・・・・・47%
 「ブロードバンドを使いたいのにサービスがない。自分たちでなんとかできないか?」・・・31%
 「ブロードバンドが使いたければブロードバンドが提供されている地域に住め」・・・・・・・・17%
 「ブロードバンドが使いたければ都会に住め」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5%  

 何とかして欲しい気持ちの人が最も多いのは当然として、自分たちでなんとかできないか?と思う人が意外と多いのです。

2.ブロードバンドサービスのインフラ構築で最も期待するやり方

 ・国や自治体などによる公的な施策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36%
 ・競争的な新興通信事業者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35%
 ・自分たちやNPOなどによる地域密着型のアプローチ・・・・・・・・・・・・・・・19%
 ・広範囲にサービスを提供する大手通信事業者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10%

 国や自治体などのお上頼み、通信事業者頼みの合計が8割と圧倒的なのは常識的ですが、「自分たちで何とかする」というアプローチも2割はあり、必ずしも完全依存型ではない点救いがあります。

3.現在の居住環境

 ・ずっと大都市圏に居住・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33%
 ・地方出身で大都市圏に移動・・・・・・・・・・・・・・・・・32%
 ・ずっと地方に居住・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26%
 ・大都市圏から地方に転居・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5%

4.「ずっと大都市圏に居住」する人の現在の気持ち

 ・ 「ブロードバンドを使いたいのにサービスがない。なんとか提供して欲しい」・・・・・・・・・・14人
 ・ 「ブロードバンドを使いたいのにサービスがない。自分たちでなんとかできないか?」・・・・8人
 ・ 「ブロードバンドが使いたければブロードバンドが提供されている地域に住め」・・・・・・・・・8人
 ・ 「ブロードバンドが使いたければ都会に住め」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3人

5.「地方出身で大都市圏に移動」した人の現在の気持ち

 ・「ブロードバンドを使いたいのにサービスがない。なんとか提供して欲しい」・・・・・・・・・・14人
 ・「ブロードバンドを使いたいのにサービスがない。自分たちでなんとかできないか?」・・・・9人
 ・「ブロードバンドが使いたければブロードバンドが提供されている地域に住め」・・・・・・・・・7人
 ・「ブロードバンドが使いたければ都会に住め」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2人

6.「ずっと地方に居住」する人の現在の気持ち

 ・「ブロードバンドを使いたいのにサービスがない。なんとか提供して欲しい」・・・・・・・・・・14人
 ・「ブロードバンドを使いたいのにサービスがない。自分たちでなんとかできないか?」・・・12人

7.「大都市圏から地方に転居」した人の現在の気持ち

 ・「ブロードバンドを使いたいのにサービスがない。なんとか提供して欲しい」・・・・・・・・・・・・2人
 ・「ブロードバンドを使いたいのにサービスがない。自分たちでなんとかできないか?」・・・・・2人
 ・「ブロードバンドが使いたければブロードバンドが提供されている地域に住め」・・・・・・・・・・1人

 現在の気持ちを居住地別にみると4〜7に示されるようになり、「なんとか提供して欲しい」気持ちと「自分たちで何とかできないか?」という気持ちの比率は、大都市圏居住者は約2:1で地方居住者は約1:1になっています。これは身の回りに何もない地方居住者の方が、「自分たちがやらなければ誰も何もしてくれない」現実を深く認識しているからではないでしょうか?

 アンケート調査の主催者は、「2−8理論からすれば、大勢を決めるのは2割で良い。他人頼みをやめて自分のことは自分で、という方向になれば日本の将来は明るいだろう。IT革命を実現するには、表面的な技術だけではなく、その根底となるべき日本人の自立が不可欠なのである。」と結んでいます。実行するのはなかなか困難ですが、少なくとも気持ちはそうでありたいと思います。




コラム5:瀬戸内の無線アクセス環境
 (2001/06/04作成:無銭家(無線家)の升田)  

 広島・呉周辺の島嶼部における無線アクセス環境について問い合わせがありましたので、まとめてみました。

1.無線アクセス環境の現状と今後の展開

 呉地方拠点都市(倉橋、江田島、大柿、能美、沖美、音戸の6町)では、政府の補助金を受け市町村広域インターネットが平成11年度に設置されましたが、町役場と公共施設とを結ぶ2.4GHz無線LANパソコンネットワークだけで民間には開放されていません。無線アクセスポイントからインターネットへ接続するまでのバックボーン回線はINS64と思われます。(事務局注:「活動報告2」をご参照ください。音戸町ではIT講習会のインターネット講習に使用されています。)

 今後、郡部及び瀬戸内に無線LANを設置し、プロバイダとして事業展開する企業が出てくる可能性もありますが、瀬戸内ではまだ幹線の大容量バック ボーンファイバーがほとんど敷設されていないので、無線アクセスポイントから先を無線中継にするか光ファイバーを新しく敷設するか、検討課題になるでしょう。 現状はファイバー、無線とも個人住宅までは当分時間がかかりそうです。 郡部のADSL化は回線性能上当分不可能でしょう。

 結局プロバイダや一種通信事業者が考えることは、大量加入者による利益が設備投資を上回らないとネットワークを構築しないということです。 広島県には個人宅向けの無線、光ファイバー通信サービスはありません。広島はCATV方式が一番普及しています(下り512kbps-1.5Mbps、上り256− 512kbps)。呉にはCATVはきていないようですが。なお、1年後には有線放送方式が進出してくるでしょう。

2.無線アクセスシステム

 インターネット接続点からアクセスポイントまでは、高容量ファイバー(10−100Mbps)で持ってくるのがほとんどです。そこからユーザー宅までは、無線または低速ファイバー(1.5−5Mbps)になるでしょう。無線の特徴は多段中継により山越え谷越えをして遠くまで持っていけることです。一方、住宅密集地はファイバーが有利です。

 一番安い屋外システムで一対向30−40万円(機器2台、同軸ケーブル2本、アンテナ2本)です。性能は2.4GHz使用でスループット3−5Mbps、伝送距離は最大3Km 、使用者数は方式によりますがだいたい最大20−30人程度です。



コラム4:無線インターネットについて (2001/06/01作成:無銭家(無線家)の升田)

 無線LANは屋内で使うものと屋外で使うものと大きく分けて2種類あります。
 屋内型は到達距離20−100m、価格は1万円−5万円程度、使用周波数 2.4GHz、電送速度最大11Mbps ですがスループットは3-5Mbps程度です。メーカーは5社程度あります。話題のブルートゥースもこの規格のLAN商品です。

 屋外型は到達距離最大6km、価格は10万−500万円程度まであります。使用周波数2.4GHz、5GHz、22GHz、38GHzで、メーカーは国内外含め数10社あります。屋外型は大きく分けて2種類あります。

 1.2.4GHzを使用する汎用タイプ 
   到達距離最大6km、価格10−50万円程度、スループット10Mbps
  山間部や過疎地又電波がありふれていないとき使用するのに効果がある。2.4GHzは解放周波数なので設置する前にこの電波が使われてないか調査が必要です。
      
 2.FWAと言われるタイプ
   到達距離最大3km、価格150万円−500万円程度、スループットは最大150Mbps取れます。
  周波数は22GHz、38GHz等ありますが他に使用していない周波数を使うため確実な通信ができます。1種通信事業者が無線で地域ネットワークを構築する場合、これを使用する事が多い。

 到達距離は最大でも5−6kmしか届かないのでそれ以上接続する場合は多段設置します。3段接続しますと3段*5km=15km届くことになります。(FWAでも同じ)

 ISPは全国にあります。広島市はブロードバンドCOMがあり無線で市内全域を構築しています。 山間部では広島県吉和村が2.4GHzを使い村全部をネット構築しています。関東ではスピードネットが2.4GHzで1万所帯を構築しています。沖縄は全島を光ファイバーと無線で構築しています。今、全国で爆発的に機器が設置され、あと3年で都市部はネットワークが網羅されるでしょう。

 無線については技術が複雑でこれ以上は講演でもしないとなかなか理解しにくいようです。必要であれば趣味の仲間として出向いてお話ししたいものです。ちなみに6月1日は電波の日です。




コラム3:”ブロードバンド”を全国に広げるには?】 (2001/05/23作成:tuusinsya)  

 5月22日付の「ITProフォーラム第7回」に題記の評論が掲載されていました。ブロードバンド推進の考え方として、市場原理を第一に考えて進むのか、巨大事業者のサービス提供を待つのか、あるいは税金投入を含む公的な枠組みに期待するのか、と言った点でまだまだ議論の余地があるとの考えから問題提起したもののようです。ブロードバンドの必要性の議論に対する答として、一読の価値があると思いましたので要点をご紹介します。[出典:http://itpro.nikkeibp.co.jp/]

[ブロードバンドサービスの水平分業]

 ブロ−ドバンドサービスを (a)コンテンツ、(b)アプリケーション、(c)サービス、(d)インフラの4階層に分け、これらを全部提供する統合型の事業モデルでは(d)のインフラがネックとなり、地方へのサービス提供がなかなか進まないことから、各階層のサービスを異なる事業者で分け合う水平分業型の事業モデルを提案しています。この事業モデルの下で(d)のインフラ部分だけを地域の特性に合った形で提供できれば、地方でのブロードバンドインフラ実現の可能性が今よりもっと高くなると述べています。その国内事例として(1)マンションやニュータウンなど、コミュニティ規模まで提供範囲を絞った形態、(2)地方自治体などによるインフラ整備、(3)有志によるサービスの実現を挙げています。また、カナダでの地域インフラ整備方法として、自治体、学校、企業、個人ユーザーが、所有のファイバーを結んで地域インフラを形成する「コンドミニアム・ファイバ」を紹介しています。

[実際の担い手]

 上記を踏まえた上で、NTTのインフラ利用や無線・光ファイバの自前整備により、地域独自のインフラ実現は不可能ではないと述べています。また、お上頼み、税金投入、公共インフラ化、巨大事業者頼みといったようなアプローチはあまり好ましくなく、通信の世界はその気になりさえすれば自分自身で小さな事業者になることもできるし、誰も提供してくれないなら自分たちでやるというアプローチも不可能ではない主張しています。これまで陥りがちであった誰かを頼る考え方を捨て、地方であっても自分たちで知恵とお金を出し合えば、ブロードバンドのインフラを整備できるのではないかと提起しています。このあたりの考え方には私も全く同感です。それを本当に欲する住民が結集することが前提条件ですが。

[何のためにブロードバンドなのか?]

 筆者は「それは分散社会のためのインフラだから」と述べています。つまり、「日本は首都圏一極集中で、市場規模を反映してブロードバンドも首都圏からである。一極集中によって、ゴミ、大気汚染、ヒートアイランド、交通渋滞など、様々な弊害が出ている。ブロードバンドは、これらの問題を改善させるための助けになるかも知れない。さらに、災害時のリスク回避という観点からも、分散社会は重要な考え方である。」ということです。

 そして締めくくりとして「生活や仕事の拠点を何処に置くかは個人の自由である。ブロードバンドが使いたければ都会に住めばいい、という考えがある。ブロードバンドが使いたければそれが提供されている地域に住めばいい、とも考えられるだろう。しかし、上記のような問題を認識し、自分が住む土地に愛着があるならば、ブロードバンドが使いたければ自分たちでなんとかしよう、という選択肢もあってよいのではないだろうか。」と提言しています。全くそのとおりだと思います。

 本評論は、ブロードバンドの必要性に対する一つの客観的な根拠を与えるものと考えます。一方、主観的な根拠は人によって異なると思いますが、その人にとっては極めて明確であり議論の余地はないと考えます。例えば私の場合は、時間やダイヤルアップの電話代を気にせずインターネットをしたい、瞬時にホームページの画面表示、切り替え、ファイル転送ができるようにしたい、というプリミティブな欲求に根ざしており、だれが何と言おうとブロードバンドを希求します。「なぜ必要か」という観念的な議論よりも、「いかにして実現するか」という実際的な議論の方が興味があります。また、「ブロードバンドを何に使うのかを先ず明確にすべきだ」という議論を耳にしますが、私はそうは思いません。「必要は発明の母」と言われていますが、その逆の場合も沢山あるという説を読んだことがあります。例えば、発明王エジソンが蓄音機を発明したとき、エジソンはその用途をなかなか思いつけず、遺言書の記録に使うことしか考えられなかったそうです。ところが蓄音機ができたことを知った誰かが、音楽の記録に使うことを思いつき、大儲けをしたということです。つまり、「発明は必要の母」というわけです。ブロードバンドも同じように、それが身近に実現すれば自ずと使い道のアイデアは湧き出ると考えます。皆さんはどのようにお考えでしょうか?


 
コラム2:インターネットの進化を促すブロードバンド
 (2001/05/16作成:tuusinsya)  

 5月14日付の「ITPro記者の目」に、「インターネットが加速した一極集中の弊害とブロードバンドへの期待」と題する評論が掲載されていました。現状のインターネットの問題点を摘出し、その解決をブロードバンド常時接続におけるPtoPネットワーク環境に期待するものです。ブロードバンドの必要性の議論に対する答として、一読の価値があると思いましたので要点をご紹介します。[出典:http://itpro.nikkeibp.co.jp/]

[インターネットの現状]  

 世界的に「ネットバブルが崩壊し、伝統的な企業が実力を発揮してきた」との論調が強まり、国内でもソニーやイトーヨーカ堂のネット銀行や、大手メーカー商社などのマーケットプレイス、トヨタ自動車や全日空などのBtoCサイトなど、大手企業が主導権を握る。その背景にはネットベンチャーの実力不足もあるが、クライアント・サーバーモデルをそのままインターネットに持ち込んだことが一極集中を加速した大きな要因だろう。クライアントが増えれば増えるほどサーバーは巨大化せざるを得ない。つまり、ハード/ソフトに巨額の資金を投資し続けられる企業でなければ、ネット上のサービス提供者として存続できない。投資効率を高めるためにサーバーやデータセンターなどの統合が進むので、大手企業が集まる東京への一極集中が加速されるばかりである。利用者からすれば、ネット上のサービス提供者が誰だろうと関係ない。だがネットサービスを実際に生みだしているソフト開発の視点から見れば、東京への一極集中は情報格差を拡大し、”ITによる日本再生”どころか”ITが国を滅ぼす”ことにもなりかねない。

一極集中の弊害

(1)ソフト開発者の東京集中によるコスト増
 世界でもトップレベルの東京の諸物価を前提にしたソフト開発料金相場の形成である。今でさえ高いイメージのある情報システム構築はさらに高くなる。
(2)システム構築プロジェクトの管理技術者及び人材育成場の欠如による品質低下
 頭数重視のソフト開発現場では、全体を把握できる立場のソフト技術者は限られ、大型案件を受注する大手システムプロバイダも、コスト抑制のため下請けを多用するため、実際の開発現場で起こる問題に対処できなくなっている。不明確なビジネスモデルのままシステムを立ち上げる現状では若手にシステムの全体像を把握する機会を与えることすら難しい。
(3)IT格差による地方のさらなる地盤沈下
 サーバー・ハードやソフト製品は安価になり、中堅・中小企業の導入は容易になった。しかし、それらを利用するためのソフト開発やコンサルティングの料金は高くなる一方で、中堅・中小企業が不利な状況は変わらない。加えて、これまで地方のシステム構築作業を一手に引き受けることでノウハウを蓄積してきた地場のシステムプロバイダが、首都圏の案件でも引く手あまたになり、首都圏ビジネスに投資を集中する傾向も出始めた。ソフト開発者がそばにいなくなった地方のIT導入速度は遅くなるだろう。

ブロードバンド時代の常時接続による改革

将来に改革が期待できるのはブロードバンド時代の常時接続であり、そこで実現されるピア・ツー・ピア(PtoP)のネットワーク環境、そしてオープンソースとコミュニティの概念である。特定のサーバーに依存することなく、参加者それぞれが知恵と適切な投資を出し合うことで、地元での取引を活性化できるであろう。
 クライアント/サーバー(C/S)ベースのネットビジネスは、一極集中が故に全国規模の不特定多数を対象にしたサービスを模索するしかなかった。PtoPでのサービスは、特定の利用者(コミュニティ)を対象にするのでビジネスモデルは立てやすく、地場密着の事業展開が可能になる。サービス提供拠点が分散すれば、自然にソフト会社/技術者も市場の近くに散らばり、いまより柔軟なサービス体系や料金体系が生まれるはず。
 商業化されたインターネットは、ネットワークの開放と引き替えに、利益重視の一極集中モデルを再現してしまった。管理・集中型のコンピュータに抵抗した人々がインターネットを草の根的に広げ始めたように、インターネットを再度、利用者の手に取り戻すためのITと知恵、そして参加者意識が今、求められている。


コラム1:国内で活気づくコンテンツ・デリバリ市場 (2001/05/16作成:tuusinsya)  

 5月8日付「ITProコラム」に、ネットワークのボトルネックを避けられるコンテンツ・デリバリ・サービス市場のレビュー記事が掲載されていました。ネット市場動向の話題のひとつとしてご紹介します。[出典:http://itpro.nikkeibp.co.jp/]

動向全般

 国内でコンテンツデリバリ(CDS)関連の動きが活発化している。CDS最大手の米アカマイ・テクノロジズほか、米ミラーイメージ・インターネットが日本市場に参入。すでにCDS提供中の米ディジタル・アイランドや米アデロ、米エピックレルムに加え、アクセリアなど国内のCDSプロバイダもサービスを始めた。また、CDSによるインターネット上でのコンテンツ配信のほか、eラーニングなどイントラネット向けにCDNを構築するユーザーが出てきた。CDSは、ネットワーク上のあちこちにコンテンツを複製するサーバーを分散配置し、ユーザーごとに一番速く応答を返せるサーバーからコンテンツを提供する仕組み。ネットワークのボトルネックを避けられるため、Webアクセスを高速化させられる。

実証実験
 IIJ、シスコシステムズ、日本オラクルの共同プロジェクト「CDN JAPAN」では、大容量コンテンツ配信ネットワークHSMNを中核として、コンテンツ配信提供者にCDN技術を使ったブロードバンドコンテンツ配信の技術とビジネスモデルの実証実験の場を提供する。
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